高谷 聡・恵美

2019/08/03 11:42・

昭和の柔道家・木村政彦の生涯を描いた評伝。
時に創作を交えながらも、圧倒的な取材量による考証は他に類を見ない。
柔道経験のある著者の、木村政彦への余りある思い入れが感じられる長編だ。
柔道家・木村政彦の人生において、そのクライマックスは3つの試合であった。
日本が戦争へと突き進む中、我関せずとばかりに稽古に没頭し掴んだ天覧試合での優勝。
戦後の時勢に流されて辿り着いたブラジルの地での、エリオ・グレイシーとの一戦。
そして表題にある、力道山とのプロレス試合。
どれも試合前後を含めた臨場感溢れる描写が圧巻だ。
読む者の魂を高揚させてくれるところである。
さて、木村政彦は昭和の大戦により人生を狂わされた1人であった。
柔道は大切だが、何より家族を養っていかねばならない。
そのために、プロレスと力道山に関わる運命を持ったのである。
敢えて言う。
ラストは、プロレスに復讐すべく育てた弟子の岩釣兼生が地下格闘技に進出する場面ではなく、愛し連れ添った妻との問答で締めてほしかった。
(文責・大星タカヤ)

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