ieshige

2019/08/21 23:53・

固体物理学の教科書として最も有名であろう一冊がこの本、キッテル固体物理学入門である。本書は物理学、化学、および工学の学部上級生と大学院初級生のための、固体状態/凝縮系の物理学の初等的教科書の上巻である。初版は1953年。その息の長さは、版を重ねるごとに著者がその時代の最先端を本書に盛り込もうとしてきたことによるだろう。
上巻では、まず結晶構造と結晶が持つ弾性や振動、熱的特性についてそれぞれ章立てて解説されている。次いで金属や半導体、絶縁体に関する電気伝導などが導入される。最後に超伝導を実験事実と理論的考察の二つの部分に分けて解説している。
本書を開いてみて最初に気づくことは、分かりやすくて大きな図が多く乗せられていることではないか。章によってはほとんど一ページに一枚図が載せられているといっても過言ではない。これらの図は古い版から使われているだろう古いものもあるが、本文の理解を大いに助けてくれる。そしてもう一つ、重要な式がCGS単位系とSI単位系との二種類の書き方で並べて書いてあるということだ。固体物理学を勉強するさいに、この二つの単位系の混在は初学者にとってたいへんなハードルである。同じ内容を表す式に変な係数がかかっていたり、そもそも計算が合わなかったり。そのあたりをちゃんと配慮してあるところ、本書は読みやすい教科書となっている。
下巻とあわせると本書は物性分野を満遍なくカバーしているため、固体物理学、固体化学等を学ぶ大学生などにとってよい教科書となるだろう。

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