ieshige

2019/08/22 00:46・

本書はスティーブン・ブランデル教授(オックスフォード大学)によるMagnetism in Condensed Materの邦訳である。副題のとおり、物理を専攻する学生に向けて書かれた内容となっている。
本書は基礎となる量子力学、対象性、電磁気学の基本的な物理的原理を重視した書き方になっており、読者にも多少の前提知識を要求するところがあるように思う。しかし、これらの基礎的な重要事項は巻末に要領よくまとめてあり、容易に参照することができる。本書の意図は磁性の重要なテーマと現実の実験との間、また学習する学生たちと最先端の研究との間の溝を埋めることであると、筆者は語っている。本書を読むと実験法や実験データが多く紹介されていることに気がつくだろう(もちろん理論もちゃんと解説されている)。これによって数式として表されているものが現実に測定可能な物理量であり、目に見えるものであると納得することができる。また、最後の一章を割いて、最新の研究として相互作用が競合している系や低次元性を持つ系での磁性について解説がなされている。フラストレーションの系などに加えて、分子磁性体やスピントロニクスなどの近年急速に発展している分野についても言及がなされている。
本書には数多くの練習問題が収録されており、独学で磁性を学ぶことができるようになっている。もちろん付録に回答とヒントも収録されている。ただし非常に残念なことに、私が研究室の輪読で本書を用いた際には、本文中にいくつかの誤植が見られたと記憶している。オックスフォード出版局のホームページに英語版の回答と誤植の修正が載っていたのでそれを参考にした。新たな版では修正されることを期待している。

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